ネコとは、いったいどんな動物なのでしょうか。ネコと呼ばれる家ネコはすべてリビアネコという野生のネコを祖先としています。リビアと聞けば遠い砂漠の国を想像することと思いますが、ネコは本来、砂漠の生き物なのです。リビアネコが遠い昔、なんらかの理由で人に飼われるようになり家畜化されました。家畜化といっても、牛や馬のように食べたり働いてもらったりすることが目的ではなく、人間のそばにいて自分が食べるためにネズミを捕ってくれればそれでよかったようです。
人間とネコの歴史は五千年前のエジプト時代の絵やミイラになったネコなどから、単なるペットではなく神格化された存在であったことがわかります。さらに九千五百年前にキプロス島で人間といっしょに埋葬されていたネコの骨が発見されて、ネコの家畜化の歴史はさらに古くなっています。そして日本にネコがやってきたのは千三百年前の平安時代。唐から仏典とともにやってきたらしいことが分かっています。つまりリビアネコは、九千五百年前に人間と暮らはじめ、中東からヨーロッパやアジアへ人間とともに移動し日本にたどり着くのに八千三百年の月日を費やしたことになります。
遠く砂漠からのお客様は、今では日本どころか世界中、人間のいるところにはどこにでも暮らしているのです。
そういった意味で、家ネコは帰化動物といえます。イリオモテヤマネコや対島ヤマネコとは、ネコといえどもまるで異なる種類なのです。砂漠の生き物が時間を経て日本で暮らすようになるなんて、ロマンを感じずにはいられません。残念ながらラクダは日本に帰化していませんから。そしてネコとラクダの共通点が生物学的にあります。それは水を飲む量が少なくてすむこと。水のない砂漠では、ネコもネズミを食べることで水分を補っていました。100グラムのネズミの70%が水分として70ccの水が得られるのです。ですから強力な尿を濃縮できる腎臓を持っているのです。
研究員南部和也獣医師が共同通信より配信された「猫の達人」より抜粋された記事です。