ネコは咽喉を鳴らします。なぜ鳴らすのでしょう。「それは気分がいいからでしょう」ネコと暮らす人はそう答えます。言葉を話さないネコに直接聞くことはできませんから、人は、ネコが咽喉を鳴らしているシチュエーションからネコの気持ちを察しようとします。ネコがひざに乗って来てくつろいだようすになりのどを鳴らし始める。こんな状態は、人もネコも幸せに違いありません。
ネコを科学する人は、その理由もさることながら、どうやって音が出ているのだろうと考えてしまいます。ゴロゴロの音が声帯から出ているのであれば、それは声と同じ音で、息を吐き出しているときにだけ鳴っているはずです。しかしネコのゴロゴロはその調子が一定であり、呼吸しながらも変化しないで鳴らし続けることができるのです。息を吸っているときも吐いているときも音がするのですから声とはまた別な方法で音を出しているに違いありません。長い間不明だったゴロゴロの音の発し方ですがそれがとうとう科学的に解明される日が来ました。声帯とは全くべつの 咽喉の筋肉を震わせる事で音を出していることが分かったのです。 実はこのゴロゴロは、ネコに限らずトラもすることが分かっています。体の大きなトラですから、ゴロゴロもさぞかし大きな音で聞こえることでしょう。その仕組みは解明されても、なぜ咽喉を鳴らすのかという疑問は残ります。諸説あるところですが、いまのところ正確な答えを出せる人はいません。私たちがネコを診察するときにも咽喉を鳴らす子がいます。咽喉を鳴らし始めると聴診器からは、心臓の音も呼吸音もかき消されてしまいます。そんな時、飼い主さんは自分のネコの気分がよいのだと理解して少しだけ幸せな気分になります。私はゴロゴロが治まってくれるまで待たなくてはならないのですが、せっかくいい気分のネコの機嫌を悪くするわけにもいかずこまってしまいます。いずれにしろネコのゴロゴロには、人の心を和ませる効果はあるようです。ちなみに病気で具合の悪いネコも咽喉を鳴らすことがあります。
研究員南部和也獣医師が共同通信より配信された「猫の達人」より抜粋された記事です。